それは2004年の春頃に「軍艦島」を知ったことが全ての始まりだった。当時ネットで、~思い出に残る怖いCM・不気味なCM~のようなコンテンツを見ていて、その中の一つにAC(公共広告機構)の、資源の枯渇をテーマにしたCMが紹介されており、そのCMの舞台が軍艦島だった。
沖に浮かぶ小さな人工島なのだが、そこは団地や学校や病院、娯楽施設などが揃った一つの街であり、何か映画か小説に出てくる架空の街のようで思わず引き込まれた。
だがその島はとうの昔に閉鎖されており、現在は朽ち果てたコンクリートの建物が残るだけの廃墟と化していて、そのやや不気味で無機質な姿が益々架空都市のようであり、いつか軍艦島を生で見てみようと心に誓った。
さらに、ただ軍艦島を見て帰るだけでは勿体無い、せっかく遠い長崎まで行くのだから他にいくつか見所を観てまわろうと思い、今回の旅の計画を立てた。
当初の計画では飛行機で向かう予定だったが、交通手段を調べている際、2019年現在ではほぼ全滅に近い寝台車が当時はまだそこそこ存続していることを知り、どうせ旅をするなら行きは贅沢に寝台車で行こうと決めた。「はやぶさ号」、今は絶滅してしまったブルートレインである。
そして迎えた旅の初日、16時過ぎに自宅を出発。
家を出た瞬間から旅は始まっている。旅行好きの人にはわかるであろうこの感覚。列車が出発する18時まで時間はたっぷりあるが、当時友人が店長をやっていたカレー屋で少し早目の夕食を取るため、東京駅へ行く前に新小岩へ向かう。
自宅から最寄駅までの見慣れた景色も、旅行へ行く時はいつもと違った雰囲気に感じるから面白い。カレー屋で夕食を取ったあとは友人に見送られ、再び電車に乗り東京駅へ。
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東京駅の10番線に着いたのは列車が入線する10分ほど前。長旅前の雰囲気を楽しむ。 東京発だと首都圏近郊へ向かう列車が多数を占める中、ここ10番線は遥か遠くの「熊本行き」の表示。このギャップが面白い。 |
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当日利用したのは「ソロ」と呼ばれる個室B寝台。B寝台と言っても中はテーブルや荷物置きがあってそこそこ快適。内側から鍵をかけられプライバシーも完全に確保できる。これで料金は通常のB寝台と同じだからお得。 |
18時3分、定刻通り東京駅を出発。しばらくの間周囲を走る電車は、家路を急ぐ乗客をたくさん乗せた慌ただしい雰囲気の通勤電車。こちらは寝台車のベッドにゆったり腰掛け、ちょっと優越感を味わう。これも長距離列車の醍醐味。
最初の停車駅「横浜」を出たあと本格的な車内放送が始まり、車両の編成や自販機などの位置の案内、これからの停車駅と予定到着時刻を告げる。いよいよ旅のムードが高まってくる。
他の開放型寝台の車両を何両か歩いてみたが、春休みという時期柄か家族連れが多くそこそこ席は埋まっていた。トランプに興じる人たち、ベッドで横になって読書をする人、通路の椅子に座り車窓を眺める人など、どの車両ものんびりとしたムードが漂う。寝台車でなければ味わえない光景だ。
となりの車両は個室A寝台。いつかこの個室A寝台に乗って旅を、と少年の頃夢見た人は多いはず。洗面所は画像のように昭和の雰囲気の古いタイプのものと、リニューアルしたものが混在していた。 | |
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朝のおはよう放送で目が覚めたのは6時。乗換駅の鳥栖まで時間はたっぷりある。途中門司駅で機関車付替えのためしばらく停車する。その時間を利用して駅で弁当と飲み物を買い、車内で流れる景色を眺めながら朝食。
10時36分鳥栖駅に到着。そこから特急列車に乗り換え、佐世保駅に着いたのは12時すぎ。
2日目の目的地は平戸島と生月島。レンタカーを借り最初に向かったのは平戸島。平戸島の目的は、カステラの元になったと言われる「カスドース」と言うお菓子を食べること。
「カスドース」はポルトガルから伝わったお菓子で、この旅行の計画を立てている時に偶然知ったもの。そもそも「カスドース」の存在を知らなかったら、平戸島・生月島を訪ねることもなかったかもしれない。「カスドース」の詳しい情報はこちら
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長崎本土と平戸島を結ぶ平戸大橋。 |
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平戸島の市街地。右は「カスドース本家 湖月堂老舗」の店舗。店に近づくだけでいい匂いがしていた。 |
平戸島から車で少し走ると生月大橋を渡って生月島に辿り着く。生月島最大の目玉は「塩俵の断崖」と呼ばれる、玄武岩が連なる断崖絶壁。長崎県新観光百選にも選ばれている絶景スポットとなっている。 | |
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平戸島と生月島を結ぶ生月大橋。 |
生月島を渡ると、サンセットウェイと呼ばれる延長10.4Kmのドライビングロードが始まる。絶景に囲まれながら快適なドライブが楽しめる。塩俵の断崖を間近で見るには、案内看板の箇所から徒歩で向かう必要がある。 | |
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サンセットウェイ | |
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案内図 |
額縁に入れて飾っておきたくなるような景色。ちなみにここでも、刑事たちに追い詰められ、説得された犯人は多いのだろうか(笑)? |
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佐世保のホテルで一晩過ごしたあと、佐世保駅から長崎駅まで電車で移動。
長崎駅に着いたらさらにそこから長崎半島の先端「野母崎」までバスで移動。野母崎から出ている「軍艦島※1クルーズ船」に乗るためだ。
このクルーズ船に乗ると上陸はできないものの※2軍艦島のすぐ近くまで行くことができ、途中スピートを落としてくれるので軍艦島をゆっくり鑑賞することができる。
※1 軍艦島の正式名称は「端島」。右の地図参照。
※2 2006年当時は上陸は不可であったが、現在は様々な会社が軍艦島クルーズを開催しており、よほどの悪天候でなければ基本的に上陸することができるクルーズ船が多い。
当時は今ほど軍艦島がメジャーではなく、この日も春休み期間中とはいえ悪天候のためか現地周辺を訪れてた人はいなく、当然この船に乗船したのは自分一人だけだった。クルーズ船というより大きなボートと言った感じだったが、それでも貸切状態を楽しめたのは面白い体験。 | |
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間近で見る軍艦島 | |
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船乗り場に隣接する軍艦島資料館。内部には、かつて人々が生活していた頃の貴重な写真や資料の数々が保管されている(現在はリニューアルされている模様)。 近くに土産物屋もあり、軍艦島に関する写真集やグッズも売っていた。 |
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